第56話

ショウはドアが開いたことに気づいていない。



その証拠にニヤリと笑みを浮かべて指の間接をポキポキと鳴らし始めた。




「借りを返させてもらうぞ」




ショウの言葉を耳にしたケイの顔が徐々に険しくなっていく。



一瞬だけ冷めた目をショウに向けたケイは、少し出していた顔を再び廊下に引っ込めた。





「ケイ……?」



「は?」



「オバサァァーン!ショウがカンナを襲ってるー!!」



「ちげえぇぇぇっっ!!」





ケイが叫んだ言葉に被せるようにショウが全力で叫ぶ。



あまりの煩さに慌てて両手で耳を押さえた。




煩すぎ!鼓膜が破れちゃうっ。





「いや、どう見ても犯行現場を取り押さえた感じだろ」



「違うって。カンナなんか襲うわけねぇし!!」



「あー。たまにあるよな。気の迷いってやつが」



「違うって言ってんだろっ!!」

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