第57話

ショウは私の上から慌てて飛び退くと、ドアの前に立っていたケイに向かって私の鞄を投げつけた。



宙を舞った鞄はケイに当たることなく、派手な音を立ててドアにぶつかる。



その反動で鞄の中身が盛大に床に散らばった。




「あ~!チークが割れちゃったじゃないっ」



「黙れ。お前が悪いんだよ」




ポーチからはみ出た中身が粉々になったピンクのチーク。



高かったのに……!!




「コントロール悪いな。擦りもしねーじゃん」




ケイが床に散らばった鞄の中身を片付けながら鼻で笑う。



トタトタと走るスリッパの音が聞こえて数秒後、ママが開いていたドアを全開にして部屋に入ってきた。




「カンナちゃん?」



「マ、ママ……」




不思議そうに首を傾げるママに駆け寄って抱きつく。



私のハートもチークと同じく粉々だよ。





「どうしたの?」



「ショウが私のチークを……破壊した……っ」

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