第46話

むち打たれながら強姦されるのも、生きながら生血を啜られるのも選択は自由だったが、俺がこいつに用意したのはファイトショウ。そのままだとすぐに撲殺されるから、タレアドールという上質の筋肉増強薬を打ってやった。神経系にもよく巡るから、心身ともにぶっ飛べるヤツを。


 自分のファイトを待つ間、女は食い入るように他人の試合を見ている。


 攻撃の動き。防御。息づかい。体のつくり。体に負った傷の種類。


 紐で繋がれて、クスリに意識を犯されながら、女が眼球から脳に情報を送り込んでいる様は、綺麗だった。



 インプット。焼き付け。情報処理。


 女の中で何が起こっているのかは判らない。

 

 だが、この能力がどういった種類のものかは、徐々に見えてくる。



 マインドサイトというよりは、ゾーンを持つ女。



 集中のそのまたさらに向こうにあるさらに研ぎ澄まされた集中。


 色がなくなるという。

 音が消えるという。

 景色が変わるというものもいる。


 アルファ波とシータ波が脳を占めるその世界。


 こいつは恐らくいとも簡単に、その『ZONE』に入ることができるのだ。


 おそらく鍵となるのは、その眼。



 戦いながらも、その眼の能力は衰えを知らなかった。


 

 もっとも輝きが増したのは、女の家族のことを口に出して戦いに発破をかけたその瞬間だった。


 ほう。


 自然に頬が緩む。



 怒りと、守るモノを意識した時の保護欲。その二つが、どうやら彼女のスイッチらしい。

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