第27話
Tが年相応に寂しいんだと知ったのは、レンタルホールのライブから人気に火がついて、メジャーテビューが決まった7Ⅶ(セヴンセヴン)というグループの壮行ライブの夜。
始まる前に、ボーカルのかっちょいい少年が、Tのピアスホールに白い粒のピアスを刺してやっていた。
誰が見たって、Tに惚れてる。メロメロの、ぐてんぐてんだ。
単純に喜ぶTは、まんま、単純に「ありがとう」と礼を言った。
そこ、違うだろっ。と心の中でついツッコミを入れる俺。メゲないボーカルは、精一杯の勇気を込めてTの耳のピアスと、その後彼女の唇に指を添えた。
コイツ、キスする気かよ。
胸がジリジリと焦げる錯覚。一人で受け止める気分じゃなくて、俺は俺よりさらに新入りの八嶋という男を引き寄せた。そいつも二人に気づいていたようで、――こっちはやけに暖かい眼差しでTを見守っている。
Tが、その手をさりげなく握手に変えた時、俺は天を仰ぎそうになるほど安堵した。態度に出さなかったのは、才能だ。
――Tは。
ボーカルの、カイの気持ちをちゃんと知ってた。
Tが気づかないフリを装っていたのは、自分と彼とでは人生のステージが違うなんてとてつもなく卑屈な思いこみをしていたからで。
ライブが終わって、遠くからグループを見つめる彼女は、ちょっと切なくなるくらい小さく見えた。
俺、慰め方なんて知らねぇし。
戸惑っている間に、八嶋がTの頭にポンと手を置いた。それだけで、二人は完成してしまう。完結してしまう。
もうボロボロだよ。俺。
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