第23話
「なら、店の主を紹介してあげる。とびきり可愛い、ここのエンジェルをね」
「天使?マネージャーって男じゃなかった?」
「ああ。もちろん店の経営は彼。でも実際の切り盛りはもう一人の女の子がやってるの。建物と店の法的オーナーの孫なんだけど、店の掃除から厄介な客の相手まで何でもこなす子よ。彼女のオメガネに適えば、見事あなたもこの店の客になれるわ」
丁度その時、店のどこかから悲鳴が上がった。ガチャン!と音をたてるアイスぺールやテーブル。女の罵声は英語。それと何故か喝采。
「始まったわね」
カオリは片目を閉じて肩を竦めた。
喧嘩は黒人の女と、日本人の女。フロア近くのテーブル席で、黒人の方が相手の胸ぐらを掴みあげていた。
ビッチだのファックだの、ありきたりの罵詈雑言を並べ立てて女は相手を押し倒す。そのまま馬乗りになって日本人の頬を平手打ちした。
「すげぇ喧嘩」
「ララは、ボブが好きなのよ。そのボブは女好き。きっとボブとあの日本人の子は寝ちゃったのね。日本人の方は観光客よ、きっと」
「…で、ボブは?」
「ほら、あそこ。近くに立ってる色男。きっとこう言ってるのよ。ベイビィ、俺の為にこんなにホットになれるのかい?って。あ、来たわ」
カオリが安心したように笑った。
つられてそこを見る。
図体のデカい黒人や、タトゥーが目立つ太い二の腕の白人たちの間を縫うようにトラブルの中心にやってきたのは。
「子供じゃないか」
「そう。コドモよ。だけど大切な、ホールの“ガーディアン”。本人は雑用係を公言して譲らないけどね」
カオリは再び、ウインクを寄越した。
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