第21話

気が済むまで客たちを観察して、それから二本目のビールを買った。


「あなた、観光客?」


 カウンターにいた客に声を掛けられた。


「ここはヨソモノには怖い場所よ?見たところ一人のようだけど…女の子探しなら違う店を紹介してあげる」


 ロングアイランドアイスティーの細身のグラスと、刺さった赤いスティクを無意識にいたずらしながら、とびきりの美女はそう言った。


「口説き以外はお断り」


 俺はビールを軽く掲げて提案を断る。


「だけど今日は女の子探しじゃない」


「じゃあ、男探し?」


「ゲイでもない」


「――…クスリ?ここでは絶対に手に入らないわよ?」


「クスリなんて、下らないっしょ?」


 ―――――――…。


 暫く俺を見続けた美女は、あっさりした笑みを浮かべて、空いている隣の椅子を勧めた。

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