第20話

昼ですらそうだから、夜のここは、更に荒む。


 日が沈んでからまた訪れてみると、そりゃもうスゴかった。


 体躯も声もとびきりデカいアメリカ人。プンプン臭ってくる、軍人の雰囲気。


 それに集る、派手な日本の女。


 ジージー音を立ててついたり消えたりする街頭の下では、喧嘩が始まっている。はやし立てる男たちもまた、外国人。


 俺はジーンズのポケットに両手をつっこんだまま、そんな人間たちの間をすり抜け、数センチだけ開いたドデカい鉄のドアの前に立った。


 数センチだけの理由は、年期の入った建物の歪みだと、ポケットから出した手でそのドアを押しながら分かった。とにかく重くて軋む。


 開いたそこから身を滑らせると、洪水みたいにブラックミュージックが鼓膜からなだれ込んでくる。


 カウンターで尻ポケットから取り出したクシャクシャの金と一本の酒を交換し、その茶色いバドの瓶を一度口につけてから店を見渡した。


 申し訳程度に作られたDJブース。フロアで踊る、人人人人。


 テーブル席で口説かれる女たち。


 壁に寄りかかって酒をチビチビやりながら、女を物色する男。


 

 あ~あ。あんなに絡みついちゃって。そのままここでやっちゃう気かね。


 フロアの隅では、ダンスが盛り上がり過ぎたのか、そのまま腰を振って互いに擦りあいながら服を乱す男女。

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