第19話

ちょっと凄い場所だった。


 


 通りに続くのは打ちっぱなしのコンクリートの建物。


 その建物の壁に直接書かれた看板。アートな落書き。ペンキで書きなぐられた、滴りまで目立つ誰かのサイン。“F”から始まる卑猥な言葉。


 ベラベラにくたびれたチラシもあちらこちらに貼られている。ライブの告知から、ポールダンスの見られるバーの宣伝。店の求人情報。日本語半分、英語半分。


 三分の一くらいはシャッターが閉まっていて、窓は殆ど鉄格子がついている。



 道端に転がるのは、ゴミ箱がわりの一斗缶。潰れかけて、何か臭う。


「ここって日本だよな」


 自分に言って聞かせてしまった。


 

 時々すれ違う人間も、大体アメリカ人。日本人がいたと思っても、すれ違う時にそいつらの会話でフィリピン人だとわかった。



 沖縄の、真ん中よりは北に近い基地の町。



 空気はじめじめしていて、立っているだけで汗ばんできた。

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