第8話
細やかなピアニストの指の、らしくなくいつもより強引な荒々しいタッチ。
これまで彼に、こんな風に触れられたことはなかった。だから京矢の指と知りながら、瞼を閉じているとそれが誰か別人の手のように錯覚する。
手際よくブラウスやブラを落とされる。“彼”はすぐに地肌に触れてきた。
爪でピンと弾かれ、思わずビクリと反応する。ささやかな二つの盛り上がりをなぞり、摘まみ、こねられた。
「…っ」
小さな痛みが、子宮のあたりに伝わるころには痺れに変わっている。紗季乃には、それが快感というのだと判っていた。
一度離された指は、今度は濡れた感触に変わっていた。“男”はいつもより荒々しく肌を探る。
――頭のすみに浮かぶのは、手に入らない一人の男。
「…もっと…」
紗季乃はつい胸を突き出す。片手で包めるくらいの小振りの胸は、透き通るように真っ白できめこまかい。“男”は誘われるままそこに舌を這わせた。
意図して、音を出す。
ぴちゃぴちゃと響く唾液の音。
ピアニストは、彼女の身体を思う存分奏でた。
長けた指に翻弄される内に紗季乃の呼吸が荒くなってくる。
「あっあっあっあっあっ」
痙攣するように喘ぎが短くなる。“男”がアレグロのリズムで追い込む。紗季乃は背を反らせ、顔を真っ赤にして果てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます