第8話

細やかなピアニストの指の、らしくなくいつもより強引な荒々しいタッチ。


 これまで彼に、こんな風に触れられたことはなかった。だから京矢の指と知りながら、瞼を閉じているとそれが誰か別人の手のように錯覚する。


 手際よくブラウスやブラを落とされる。“彼”はすぐに地肌に触れてきた。


 爪でピンと弾かれ、思わずビクリと反応する。ささやかな二つの盛り上がりをなぞり、摘まみ、こねられた。


「…っ」


 小さな痛みが、子宮のあたりに伝わるころには痺れに変わっている。紗季乃には、それが快感というのだと判っていた。


 一度離された指は、今度は濡れた感触に変わっていた。“男”はいつもより荒々しく肌を探る。


 ――頭のすみに浮かぶのは、手に入らない一人の男。


「…もっと…」


 紗季乃はつい胸を突き出す。片手で包めるくらいの小振りの胸は、透き通るように真っ白できめこまかい。“男”は誘われるままそこに舌を這わせた。


 意図して、音を出す。


 ぴちゃぴちゃと響く唾液の音。


 

 ピアニストは、彼女の身体を思う存分奏でた。



 長けた指に翻弄される内に紗季乃の呼吸が荒くなってくる。



「あっあっあっあっあっ」


 痙攣するように喘ぎが短くなる。“男”がアレグロのリズムで追い込む。紗季乃は背を反らせ、顔を真っ赤にして果てた。

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