第7話

「…俺が君と知り合って、魅力的だと思った所は――」


 京矢は何を思ったか、スッと立ち上がると寝室壁際のクローゼットを開き、中に吊されたシルクのガウンを取り出した。それをベッドに放ると、ウエスト部分から同じシルク素材の腰紐だけを抜き取る。


「初対面の相手にも、しっかり自分の意見を言える所。…常に己を正そうと努力する所。それから――」


 京矢は紗季乃の背後に回り、幅のあるシルクの紐で、彼女の目を覆った。


「君の体の感度のよさ――君が小さいと悩んでるその胸が…一番感じやすくて、好きだけどね」


 フッ、と耳元で笑われた。


 同時にシュッと音を立て、紐が後頭部で結ばれる。


「…君に彼との時間をプレゼントしてあげよう。これから俺は何も喋らない。…君はこの手を彼だと思って、俺に抱かれてごらん」


 戸惑って何か言い掛けたその口を、もう一度撫でられた。


 京矢は紗季乃の手を取り、ベッドへと誘う。


 願望はあった。榊に抱かれたい、と。


 それは甘い誘惑…。


 紗季乃は暗転した世界で、京矢――榊を受け入れることにした。

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