第7話

「蓮太さんが、新作の味見に行っておいでって」


 私は目を輝かせて来店の理由を口にした。


「そう!私が頼んだのよ。是非達樹ちゃんに試食してもらいたいと思って」



 キラキラと笑顔をこぼす沙羅さん。


 色が白くて、ほっそりした美人さん。


 少しゆっくりとした穏やかな口調。


 喧嘩にもならないというおっとりした性格。


 料理上手で、聞き上手。


 だからここに来る女性客の殆どは、沙羅さんに話を聞いて欲しくてやってくる。沙羅さんと過ごしたくてやってくる。


 私も実はその一人。ここにくれば、心がほっこり暖まる。日溜まりは大好き。沙羅さんはそういう人。


「お腹、空いてる?」


「う~ん、と。美味しいものなら何でも入りますよ」


「よかった。じゃあ、少しお待ちください」


 そう言って、10分後に出されたのはパスタ皿。真っ白で楕円になっていて、縁には葉っぱの模様。


 そのお皿に盛りつけられたのは、おそらくバジルのパスタ。


 緑。濃い、緑。どうやったらここまでミドリってくらい、緑。その麺に、タピオカのような、白い粒々が散らばっている。


 皿の端にちょこんと乗るのは、陶器のカエル。目付きが悪い。


「──沙羅さん、これ…」


 ちょっと戸惑って首を傾げた。


「鮮やかでしょ?“カエルのたまご”ってメニューにしようと思うの。どう?」


 どうって…。


 取り敢えず、口に入れる。

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