第21話
机との間にゆとりを持って座っていた小澤さんが、何気なく足を組んだ。それからゆっくりと膝の上で指を組み、悠々とした風情で担任を正面から見直した。
彼を纏う雰囲気が、たったこれだけの仕草で濃く重く変化する。
「実はまだ、何も聞いていなくてね」
先生には紳士然としていながら、私に対してはどこか意地悪く視線を流す。
「今日の面談も、この子の相談も、初耳だ。詳しく教えて頂けますか」
そこだけ丁寧に敬語に変える。
私はそこでやっと小澤さんの怒りを知る。これは、よくない。多分話すタイミングを間違えている。
私は慌てて岩切先生と小澤さんの会話に割って入った。
「せ、先生!この話は、もう少し時期をみてからがいいと思います!だって、まだ…」
「いや仲尾次さん。時期は早い方がいいよ。高認だって立派な試験だ。年二回あるとはいえ、その為の準備は簡単じゃないし、早めに話し合って、もっと高校生活を充実させることもできるんだから」
「高認…?」
静かに、小澤さんがそこだけを繰り返した。
「ああ、はい。そうです。高等学校卒業程度認定試験。仲尾次さんは、18歳までにそれを取得すれば、なにもここで三年まで過ごす必要はないんじゃないかと相談してきまして」
あ。
つい、口を開けたままにしてしまった。紗希乃さんに指摘される、私の悪い癖だ。
「口を閉じなさい」
今度はよりはっきりと、小澤さんに一瞥された。
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