第5話
唇を重ねたまま、私の舌の先を軽く舐める。それから下唇を優しく噛んだ。
「じゃあお前のキスは、何のつもりだ」
お互いの表情が見える位置まで顔を離した小澤さんは、意地の悪い笑みを浮かべて私に首を傾げた。
その事についてはもう何度も考えていたから、小澤さんほどではないにしても、わりとすぐ、口にできる。
「慰め…」
私は瞼を閉じて、八嶋さんの喪失に戸惑ったあの夜を思い出した。発作みたいに孤独に怯えた夜。
キスマークをなくしたくなくて暗闇に迷う私に、小澤さんがくれたキス。
あれは、慰めるためのキスだった筈。
「契約」
八嶋さんの赤い跡を失いたくない私に、小澤さんは契約をくれた。…私の中にいる八嶋さんごと──この人は引き受けると、いうことだ。
「包容」
じわりと、目が熱くなった。
それからは、キスキスキスの日々。それは──、
「強引、困惑、悪戯、安堵」
ぽろぽろと、言葉たちが溢れ出てくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます