第11話

「ただいま。グランマ」


 大学編入や学位取得など、八嶋はどうしても譲れない事情があるらしく、やわらかい物腰のまま、だけどかなり強引に店への出入り許可を得た。



 酒も口にしない、踊らない、ナンパもしない客なんてシラケて仕方ない存在なので、適当に店の手伝いを装って欲しい。これがタツキの最大限の譲歩だった。


 今月のレンタルホールの予約状況などを伝えて、八嶋が来る日程を決める。


 それから従業員、常連客を軽く紹介して、そっと部屋に上がったのは日付が変わった頃だった。


 案の定グランマは起きていた。


 リビングでかごに入った洗濯物を畳みながら、安心したように頷く。


「おかえり、達樹。いい一日を過ごせたかい?」


 いつもと同じ言葉でタツキを迎えてくれる。タツキはグランマの問いかけに、ちょっと首を傾げて考えてみた。


「…うん。ちゃんと、いい一日を過ごせたよ。グランマ。洗濯当番、すっぽかしてごめん」


「いいさ。だけど明日はグランマじゃなくて、達樹の番だ」


 グランマとのただいまと、その後の少しの会話。タツキが最もほっとする瞬間だ。



 一日が終わる。

   

   グランマと一緒に、


     また明日を迎えようと思う。

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