第7話

テーブルはすべて常連客で占められている。あぶれた客はあきらめてドリンク片手にフロアで踊るか、コンクリートの壁を背にチビチビ酒を口に運ぶ。


 時折新しいパートナーと出会うこともあれば、「そんな夜もあるさ」と一人で帰ることもある。


 そんな壁際の客の一組が、タツキには何とも不自然に思えた。


 二人の黒人。時々見る顔だ。特に問題を起こすこともないが、堂々とは言えない金儲けをしているとも聞いている。


 もう一人はアジア系の男性。成人はしているだろう。服装から日本人、それも地元ではなく県外出身者の雰囲気がする。


 長身で、柔らかそうな髪は陽の下で見ると栗色に近いかもしれない。


 ハーフかクウォーターだろうか。


 タツキは気軽さを装いつつ声を掛けた。


「Hi.ロイ、ボブK。新顔さんじゃない?紹介してよ」


 何てことはないという笑みで着崩したシャツの襟に触れながら、ボブKは顎を上げた。

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