第4話
手際よくビール瓶を業務用の冷蔵庫に並べていると、カウンターの向こうから客たちが気軽に声を掛けてくる。
「Hi ベイビィT!」
「Hi ブランドン!ベイビィはやめてよ。この頃みんなが真似するんだから」
「ボーイフレンドが出来たらベイビィは卒業して、レィディになれるんだせ?」
「簡単に言わないでよ。じゃあベイビィでいいもん」
「こんにぃちわぁ、たつぅきぃ!」
「こんばんは、だよ。ステフ。もう夜になってる。ステフたちの時間だよ」
「おじゃましてるよ、タツキ。今日は『彼ら』来てるの?」
「かおりさん、いらっしゃい。今日はネイビィは少ないみたいだよ」
「っもう!マリーン(海兵隊)かネイビィ(海軍)かを訊いてる訳じゃないわよ!」
「あはははは。ごめんなさい。…でもとにかくフレッドはまだだよ」
会話しながらも、タツキは手を休めない。カウンターのこちら側はまさに戦場で、割れたグラスの破片を建物裏に出すことから、ライムを形よく切ること、アイスの補充に、ダスターの洗濯。バーテンダーたちの手伝いは山ほど残っていた。
忙しいけれど、その分時間が過ぎるのも早い。
タツキは灰皿を洗いながら、ずり落ちてきた左袖を顎を使って器用に引き上げ、ついでに腕時計に目をやった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます