ホームグラウンド

第3話

重く錆び付いた厨房のドアを、ビールケースを持ったタツキは右肩で勢いよく押し開けた。


 途端、お腹までビリビリ震えるような騒音紛いの音楽に包まれる。



 流れる曲は本来のR&Bよりピッチが早く、低音が抑えられている。


 これはジェイクの音だ。


 それで今日のレンタルホールが、ジェイク主催の「クレイジィ ダンス ナイトクラブ」だと判った。


 自称“本場を知るDJ”の彼は、恋愛も音楽もヘビィなのは苦手だと公言している。



 音楽、笑い声、喧嘩、異性への賞賛、批判、ボスの愚痴。グラスの響き、クラップ。



 コンクリートの箱の中で、大勢の人たちの、ありとあらゆる音が混ざり合った週末の洪水みたいな空間。



 16歳のタツキには…その独特の濃さを持て余すこともあるけれど…馴染んだ生活の一部となっていた。

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