第3話
受付の華やかな笑顔に見送られながら、社内スタジオに向かった。後片付けがまだ残っていた。
乗り込もうとしたエレベーター。
何故か健吾さんが一人、扉の横に立っていた。
強ばりそうになる頬を、なんとか普通に保つ。不自然にならないように、
「こんにちは。お仕事はもう終わりですか?」
二度目の会釈をした。
「いや。まだ途中だ。君もバイト中か」
「はい。社内広報部の雑用を」
言いながらパネルの上マークに触れた。これ以上会話が続かない。暫く待って開いた扉にほっとしながら、一応健吾さんにも聞いてみた。
「乗りますか?」
「ああ」
…乗るんだ。
ちょっと緊張しながら、エレベーター内で角に寄る。
「何階ですか?」
「15階だ」
当然だろう、という雰囲気で健吾さんが答えた。社長室のある階だ。正確に言うと健吾さんはSAWAの社員ではない。それを思い出せば、愚問だ、と言わんばかりの彼の口調も納得できた。
私が降りる階は系列会社全ての共有スペースがある10階。あと数秒の辛抱だ、という気持ちで閉まる扉を見つめていた。
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