第74話

「何処のヘブンにこんなイケメン女子が舞い降りるのさ!」


「背中には純白に輝く片翼が生えてるんか!?」


「ちょ、もういい加減落ち着きなさいって!

 ちゃんと話すから!

 とりあえず座って!」


肩で息をしながら、なんとか優と夏を落ち着かせる事に成功する。

2人は律儀にも、座布団の上に正座をし、体を澪の方に向けて話を聞く体勢に入った。

澪もきちんと座布団に座り直し、改めて美咲との出逢いから付き合っていた事、別れた事を話した。


「そっかあ。

 なんかドラマチックというか、なんと言うか」


「まさか澪がこんなイケメンと付き合ってたとは…。

 いやはや、実に羨ましい…。

 もう女だろうが、何も関係ないわ。

 お付き合い出来るならそれでいい」


「2人とも、目がまじで怖いから!

 あたしも確かに、美咲みたいなイケメンと付き合えるとは思ってなかったから、最初は凄くびっくりしたけどね。

 とにかく優しくて、あたしを大切にしてくれて。

 ずっと幸せだった。

 幸せすぎて怖かった…」


まるで、儚い夢のようで。

おとぎ話のような、夢物語のような。


「そりゃあずっと引き摺るわ。

 あたしだって引き摺るもん。

 でもなあ、明日香さんの言い分も解るからなあ。

 期待を持てるならまだしも、不透明な状態だもんね。

 試しに今、美咲さんに電話してみたら?」


「いくらなんでもいきなりすぎるよ。

 逢いたい気持ちは変わらないんだけどね…。

 ただ、最後の…別れの日の事を思い出すと辛い。

 あたしはまた付き合えたらと思うけど、美咲がどう思ってるかは解らないから…」


「じゃあさ、夏休みにイギリス行ってみる?

 誰か美咲の働いてる所知らないの?」


「美月さん…美咲のお姉さんなら知ってると思うけど」


「よし、じゃあ夏休みに行こう。

 で、まだ澪の事を好きかどうか、確かめに行こうよ。

 1人じゃ不安だろうし、あたし達が一緒に行ったら怖くないでしょ?」


確かにこの2人が一緒なら、心強いのは間違いないが。

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