第73話

「あんなイケメンに付き合ってって言われたのか、羨ましい…」


きっと本心で言ったのだろう。

優は小さく溜め息を1つ。

夏はといえば、酒を飲みながらテレビを見ていたが、2人の話も気になるようで、テレビを見たり、2人を見たりと忙しい。


「ねえ、元彼の写真とかないの?」


「どうして?」


「興味本位。

 どんな人だったのかなって。

 あ、嫌だったら無理にとは言わないからね」


優の言葉に少々頭を悩ませたが、携帯を取り出し、美咲の写真が入っているフォルダーを開き、特に気に入っている写真を優に見せた。

すると、夏も澪の携帯を覗き込む。


「どっっっっちゃくそイケメン!!!!」


「何処の世界にこんな眩しい人住んでんの!?

 何食ったらこんなイケメンになんの!?

 実物拝みたい!!!」


2人ともかなりご乱心のご様子だ。


「イケメンで、しかも王子様的オーラが半端ない!

 こんな素敵な人とお付き合いしてたの!?

 世の中不条理すぎる!」


「ちょ、ちょっと落ち着い…」


「ぜっっっったいいい匂いするんだろうなあ。

 ああ、包まれてみたい…」


「あ、勝手に他の画像見ないでっ!」


「お姫様抱っこ~っ!?

 しっかもセバスチ○ンのコス!?

 ぐっはあ、これは反則級に狡い!」


「何もかもパーフェクト過ぎる。

 まじで実在すんの!?」


「も、もう携帯返してっ」


「何このラブッラブな写真の数々は!?

 頬っぺたにチッスされてるじゃん!

 あたしもされたいわ!

 澪じゃなくて、あたしと付き合えば良かったのに!」


「逃がした魚はデカすぎたのではなかろうか!?

 確かに明日香さんもイケメンだけど、明らかに元彼の圧勝じゃん!」


なんだかもう、言いたい放題である。

そろそろ収集がつかなくなりそうなので、なんとか携帯を取り返す事に成功した。


「何でもっと早くに見せてくれなかったのさ」


「見せるタイミングがなかったというか…。

 てかね、この人…女の子だから…」




「「女ぁああああっ!!??」」




確かに信じられないだろうが、美咲は紛れもなく女である。

夏も優も、開いた口が塞がらないのか、しばし開いたままだった。

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