第47話

結局あの花を2人で観賞し、号泣したのは言うまでもない。


「ちっくしょう、なんで帰国して2日後に、こんなに号泣せにゃあいかんのだ」


目を真っ赤に、ティッシュで鼻をかみながら、ぶちくさと文句を溢す美咲。

その横で美咲と同じように、思い切り鼻をかむ美春は、まだ余韻に浸っているご様子。


「引きこもりだったジンタ◯が、メ◯マが成仏出来るようにと扮装し、疎遠だった仲間とも再会して、成長していく…。

 そして、最後はジンタ◯にしか見えなかったメ◯マが、みんなにも見えるようになって…。

 駄目だわっ、また泣けてきた!」


「てか、泣くなら久々に娘の私と再会した喜びで泣きなさいよ」


「THE☆無理!」


「きっぱりさっぱり言い切るなよ!?

 もうちょい私に優しくても、バチは当たらんぞ!?」


「あらやだ、(あたしの)可愛い未来の花嫁を泣かした奴に、あたしの海よりも深い愛と優しさをあげるつもりはなくってよ?」


痛いところを突かれてしまい、言葉に詰まってしまう。

さよならをした日の事が、頭に浮かぶ。

当然澪の泣き顔も甦り、胸が締め付けられる。


「あんたが向こうに行ってから、澪ちゃんはどれくらい頑張ったのかしら。

 あんたは全然知らない訳でしょ?」


そう、何も知らない。

知ろうとする勇気さえ持てなかった。


「あたしはちょこちょこ澪ちゃんと逢ったりしてたわ。

 最初の頃はどんどん痩せちゃって…。

 笑顔も心も痩せていく澪ちゃんを見るのは、本当に辛かったわ」


痛む胸を押さえても、痛みが和らぐ事はなかった。

そんな美咲を横目に見ながら、美春はテーブルに置かれた煙草を手に取ると、静かに火をつける。

大きく吸い込んだ煙を吐き出せば、部屋は煙草の香りが漂う。


「あんたもあんたで大変だっただろうし、苦労もした事でしょう。

 けど、あんたは忙しさで心の痛みを誤魔化す事は出来たでしょうけど、澪ちゃんはそれが出来なかった…。

 たまに香奈ちゃんと電話して、澪ちゃんの事を聞いたりもしたけど、ただただ辛かった」

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