君の鼓動を感じながら

第45話

ゆっくりと目蓋を開けてみる。

ここは何処だっけ。

体を起こしてみる。


ああ、そうだった。

ありさの家に泊まったんだった。


寝過ぎた訳ではないが、頭がやけにぼ~っとする。

そういえば、熟睡したのは久し振りだ。

そんな事を思いながら、腕を上に持ち上げて伸ばす。


部屋を出て居間へ行くと、いい匂いがした。

台所を覗いてみると、ありさが朝食の準備をしていた。


「おっはよ~さん。

 ちゃんと寝れたか~?」


「おはよ。

 久々によく寝れた。

 布団で寝たの、3年ぶりだったな」


「もうすぐ飯出来るから、顔洗っておいでよ。

 で、居間で待っててくれい」


洗面台に向かい、冷たい水で顔を洗うと、先程よりも大分目が覚めた。

もやがかかっていた頭も、かなりクリアになってきた。


再び居間に行くと、既に料理が並んでいた。

昨日の残りの煮物と、味噌汁、炊きたてのご飯に漬物。

そして、目玉焼きとウインナー。

昨夜あんなに食べたにも関わらず、腹は元気に反応する。


「よっしゃ、食おうぜ~」


ありさも居間にやってきた。

2人でテーブルを囲み、食事を始めた。


「そういえば梓は?

 昨日泊まらなかったっけ?」


「朝早くに帰ったよ。

 今日は大学に行くんだってさ」


食事を済ませ、食器を洗い、居間で煙草を吸う美咲に、暖かいお茶を出したありさ。

礼を言い、お茶を一口含む。


「みさきちは今日は何すんの?」


「そうだなあ、母上様のところにでも顔を出すかな。

 全然逢ってなかったし」


話を聞きながら、ありさも煙草に火をつける。


「ありさは何すんの?」


「あたしは買い出しとかかな。

 あ、あたし車の免許取ったんだ。

 バイクに乗る回数が減っちゃってさ」


「やっぱ車の方が快適だからなあ。

 バイクは走らせないと可哀想だし、今度ツーリングでも行こうぜ」


そうだ、自分の愛車も走らせてあげなくては。

明日にでも走らせてみるかな。


今時期のバイクは最高だ。

春の陽射しを浴びながら、優しい風を感じながら走る事の気持ちよさは忘れていない。

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