第39話

「なるほろね~。

 そんな事があったんだ」


先程見つけた甘味処で、休憩がてら甘いものを口にする3人。


「しっかしイケメンだったなあ。

 背も高くて、スラッとしててさ。

 笑った顔も爽やかだったよね」


早速優は、澪がぶつかった人物が気になるようだ。


「うちはもうちょい筋肉がある方が好きだなあ」


夏は自他共に認める細マッチョ好きである。


「ねえねえ、夕飯食べ終わったら店に行ってみようよ。

 折角チラシを貰ったんだしさ」


優が嬉々とした顔で澪に訴える。


「どうしようかな」


行きたいような、行きたくないような。

あの人を見ていたら、きっと今以上に美咲の事を思い出してしまいそうで。


顔は似ていないのだけど、仕草が美咲に似ていたというか。

あと、鼻に触れたシトラスの香り。

美咲と同じ香水の香りだった。


「行くだけ行ってみようよ。

 夏はどう?」


「うちは2人に任せるよ」


興味がないのか、投げやりな感じにも取れる夏をよそに、相変わらず優は澪に訴えかけていた。


「旅先でこんな風に出逢うとか、やっぱ縁があるんじゃない?

 ほらほら、彼氏もいないんだから丁度いいじゃん」


美咲と付き合っていた事は話していないが、付き合っていた人がいて、別れた事は話していた。

優にはよく合コンとかに誘われるものの、行く気になれず断ってばかりいた。

誰かと付き合う気持ちになんて、ずっとなれなかったから。


優が1度言い出すと、説得するのに時間を用いる事は解っていた。

澪がどんなに言ったところで、結局押しに負けてしまうのは目に見えている。


「しょ~がないなあ。

 ちょっと顔を出すだけだよ?」


澪の言葉に、両腕を上げて喜ぶ優。

そんな優を見て軽く微笑む澪と、呆れている夏。

そう、折角の旅行だし、少しは楽しまなきゃ損だ。

自分にそう言い聞かせてみる。


夜。

ホテルに戻り、風呂を済ませ、夕飯を食べ終わり、仕度をするとホテルを後にした。

時間が早い事もあってか、行き交う人は多かった。


ホテルから歩いて15分くらいしたところに、チラシに記された店があった。

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