第36話

それからどれくらい続いただろうか。

点数を入れては奪われ。

奪われては取り返して。

気付けば陽も暮れ始め、空は茜色に染まり始めている。


「ヴァ~っ、もう無理!」


先に座り込んだのはありさだった。


「流石に疲れたよ~」


続いて澪が座り込む。


「疲れた…。

 遊びにムキになっちまった…」


肩で息をしている美咲。


「明日、絶対に筋肉痛だ。

 なんかもう、既に右腕がおかしいもん…」


美咲と同じく、肩で息をしながら、梓はなんとか息を整えようとしていた。


「あ~、ビール飲みてえ。

 陽も暮れてきたし、そろそろ片付けして帰ろうぜ」


美咲の発案に、その場にいた全員が首を縦に振った。


片付けを済ませ、途中で解散する事になった。


「さてさて、梓とありさは行っちゃったね。

 私達はどうしよっか」


「美咲も朝早くて疲れてるんだし、今日は早めに寝た方がいいよ」


「やっと2人きりになれたのに、もうバイバイする?」


含んだ笑みを浮かべる美咲に、澪は少し照れてしまう。


「あ、あたしもこのまま帰るのは寂しいけど…。

 でも、美咲もしっかり体を休めてほしいから」


「澪が一緒にいてくれるなら、疲れなんてすぐにぶっ飛ぶよ」


そんな事をさらりと言われてしまったら、決心が揺らいでしまう。

出来るなら一緒にいたいけど…。


「また日を改めて、美咲の家に遊びに行くから」


「やだ」


子供のような美咲に、母性本能を軽くくすぐられてしまい。


「少しだけでいいんだ。

 もう少し一緒にいたい」


「…もう、狡いよ美咲」


この人に勝てない事は、自分が1番よく解っている。

静かに手を繋いで、美咲の家まで歩いて向かった。




何度も何度も体を重ねているのに、初めて体を重ねるような気持ちになる。

この口唇に、その口唇を重ねられたら、それだけで心が満たされていく。


疲れなんて、何処かに吹き飛んでしまうから。

お互いの体温を分け合って、このまま溶けてしまえばいいのに。


「美咲…」


「ん?」


荒い呼吸の中、愛しい人の名前を呼んで。


「好きだよ、美咲…。

 大好き…」


甘い声のまま、気持ちを伝えて。



「うん。

 私も澪の事、大好きだよ」

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