第34話

「ありさ、僕もバドミントンやる」


梓が立ち上がり、ありさの素へ向かった。


「よっしゃ梓、派手なバトルを繰り広げようぜ!」


梓にラケットを渡したありさの気合いは十分である。

体を少し起こした美咲と、美咲の傍に座る澪は、そんな2人を見守る事に。


「じゃあ、サーブは僕からいくね」


シャトルを左手に持ち、右手にラケットを持って構えた梓が綺麗に打った。

打ち上がったシャトルを追いかけ、元気よくラケットを振るも、見事に全力フルスイング。

シャトルは虚しく地面へと落ちた。


「ぶふっ」


「み、美咲、笑っちゃった駄目だよ」


そう言う澪も必死に笑いを堪えていた。


「い、今のは軽い準備運動に決まっとろうが!

 よし、今度はあたしが華麗にサーブを決めてやる!」


落ちたシャトルを拾い、構えるありさ。


「さあ梓、あたしのシャトルを受け取るがいい!

 スーパーウルトラデラックスアドベントスパイラル…」


「長えよ!

 いくら何でも長すぎだろ!?」


我慢出来ず、美咲がツッコミを入れた。


「喰らえっ、え~とデンジャラスシャトル!」


「デンジャラスなのはありさだろ!?」


シャトルを狙って、思い切りラケットを振る。

が、梓の元へシャトルが届く事はなく、ぽとりとありさの足元に転がった。


堪えられなくなった美咲は、大きな声で盛大に笑った。

澪もなるべく控えめに笑うようにしていたが、少し経った頃には声を出して笑った。


「うはははっ、ありさサーブ下手すぎだろ~」


笑いすぎて涙目になっている美咲。


「おいこら外野ども、笑いすぎだろうがっ!

 梓、何か言ったれ!」


「えっ、僕!?

 あ~、う~、ありさにも調子が悪い時があるので、生暖かい目で見守っていただけたら幸いです」


「オブラートに包まれた優しさが、逆に傷口に染みる!?

 ちっくそう、ダブルスで勝負じゃ!」


ありさの心に火がついたようで、本格的な勝負の流れになり始めた。


「ラケットは4本もないだろ~?」


「こんな事もあろうかと、ラケットは4本用意してまっせ!

 さあさあ、血で血を争う戦いの幕開けじゃあ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る