第21話

「あ~、まだお腹痛い…。

 ここ最近で1番笑った…。

 久々に美咲に会えたのに、笑い殺されるかと思った」


笑いすぎてむせている梓の背中を擦りながらも、美咲はまだ笑いが収まらないようだ。


「めっちゃ笑ったから、絶対腹筋がバキバキになったな。

 いやあ、ありさはことごとく裏切らないなあ。

 素敵な一時をありがとうと、心を込めて言わせてくれ」


「うるっせえ、そんなんで礼を言われても嬉しくないわい!

 ちっくしょう、暴動起こすぞ!」


ビニール袋を振り回しながら、ありさは全力で不満を美咲にぶつける。


「仕方がないから、ちゃんとしたお土産を差し上げよう」


「何で上から目線なんだよ!」


鞄から取り出した、可愛い箱をありさに差し出す。


「開けていいんか?」


「開けてみ」


1度、2度と仕掛けられているので、流石に疑心暗鬼になってしまう。

美咲の顔をちらちらと見ながら、リボンを外して蓋を開けてみた。


「入浴剤のセットだ!」


「ありさは長風呂好きだろ?

 だから入浴剤にしたんだ」


「めっちゃいい匂いがする」


「豚骨の香りの入浴剤だよ。

 長風呂したら、ありさの出汁も出…」


「出ねえから!

 普通にカモミールだろ、これ!」


ぶちくさ文句を言いながらも、その顔はとても嬉しそうで。


「さっきの落ち葉と袋だけだったら、美咲をどう料理してやろうかと思ったけど、これで許してやろう」


やっとこさ機嫌が直ったありさを見て、梓も笑みを浮かべる。


「風呂の話をしたら、風呂に入りたくなったな。

 ありさ、風呂借りたいんだが」


「じゃあ、お水張りなされ。

 あたしは夕飯の仕度を再開せにゃあ」


「よし、じゃあ僕はダーリンの背中をお流ししようかな」


「ハニー、シルクのような君の手で、私の背中を洗ってもらうなんて…。

 気持ちだけ貰っておくよ」


立ち上がり、風呂場へと向かった美咲を見届けると。


「ねえありさ、美咲はまだ澪の事、知らないんでしょ?」


「あ~、まだ言ってない。

 美咲のしょぼくれた顔が目に浮かぶなあ。

 こればっかりは、タイミングが悪かったと言うか。

 後で然り気無く言ってみるか」

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