第19話

ありさの掌に、そっとお土産を乗せた。

梓は肩を震わせながら、俯きながら声を殺して笑っている。


「みさきち、もう目蓋を開けてもよろしいか?」


「おう、よろしいぞ」


「何だか随分軽いような…」


ゆっくりとありさが目蓋を開けると。



「葉っぱぁあああああっ!?」



ありさの掌には、枯れた落ち葉が1枚。


「ちょ、ちょっとみさきちさん!?

 あたくしの見間違いかしら!?

 あたくしの手の上に、何でか知らんが落ち葉が1枚乗ってるんですけども!?」


「見間違いじゃないぞ、ありさ。

 どっからどう見ても落ち葉だぞ。

 あり?もしかして、落ち葉を初めて見たんか?」


「365日、どっかしらで見とるわ!

 何であたしのお土産が落ち葉なんだよ!?」


耐えきれなくなった梓は、腹を抱えながら大声で笑いだした。


「ばっかだな、ありさ。

 これはイギリス産の落ち葉だぞ?

 Made in United Kingdom.

 なんて素敵な響きだろう。

 良かったなあ、ありさ。

 家宝として、末代まで大事に大事に祀るんだぞ」


「アホかぁあああ!

 何処の世界に落ち葉を貰って「わ~い、ありがと~!」なんて喜ぶ奴がいるんだよ!?」


「ありさなら心から喜んでくれるかと思ったんだがなあ、おかしいなあ」


「いくら世界大陸より広く寛大な心をお持ちのあたしでも、流石に落ち葉は嬉しかねえ!

 他にはないのか、他には!」


「すまんすまん、そんなに怒るなって。

 あれだ、小手調べみたいなもんだって。

 じゃあ、改めてありさにお土産を差し上げよう。

 ほれ、さっきみたいに目蓋を閉じてごらんなさい」


「また落ち葉だったら、あたしはスーパーサ○ヤ人4になるからな」


「安心しろって、大丈夫だって。

 2回も同じ事をする程、私だって野暮じゃないさ。

 早くお土産渡したいから、さっきみたいに目蓋を閉じて、両手をお出しなさいって」


ぶつぶつ言いながらも、先程のように目蓋を閉じ、両手を差し出すありさ。

鞄から取り出したものを見た梓は、また声を殺して笑いを堪える。

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