第14話

確かに体型が変わらないのは事実だ。

体重も大きな変動もない。

が、残念ながら胸の成長は止まってしまっていて。


「いんや~、別に深い意味はないってばよ~。

 変わらない事って大切だよね」


「それは私の胸の事を言ってるんか?」


「安心しろ、みさきち。

 変わらないものにだって、多分きっとそれとなく微妙に意味はあるって。

 そう、例え小さいままでも」


「久々の再会だってのに、随分なお言葉じゃねえか。

 胸が小さかろうが大きかろうが、存在意義は示されてるんだよ!」


「悔しかったらあたしくらいに大きなおっぱいを実らせてみろ!

 大きいからおっぱい、小さいならちっぱいってか!」


「だ~っっっ、うるっせえぇえ!

 何で帰国早々、胸の話でガチャガチャしなきゃいかんのだ!」


「1ミクロも成長してない、みさきちの胸が悪いんだろうが!

 何の為にイギリスに修行に行ったんだ、ごるぁ!」


「料理の為に決まってんだろうが、くるぁ!」


「やんのか!?」


「やらいでか!?」


こんな会話のやり取りも、3年ぶりな訳で。

お互いに再会出来た事が嬉しかったのは間違いないのだが、素直な気持ちを言うのが照れくさかった。


息を整えながら、渇いた口や喉を麦茶で潤わせる。

そして、再び会話を再開する。


「てか、みどりちゃん達は?」


「あ~、そうそう。

 母ちゃん達は旅行に行ってるんよ」


「旅行?」


「ほら、結婚記念日は毎年必ず店を休みにして、旅行に行ってたじゃん」


「あ、そうだったな。

 じゃあ、家はありさだけか。

 久々にみどりちゃんに会いたかったし、料理食いたかったな」


「明日には帰ってくるよ。

 後で母ちゃんに、みさきち帰って来たってメッセしとく」


ありさが煙草に火をつけたので、美咲も鞄から煙草を取り出し火をつけた。

部屋の中に、2人が吐き出した煙が舞い、部屋が少々白くなる。

ありさが窓を開けると、春の風が煙をそっとさらっていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る