過ぎた日々に手を振りながら

第13話

変わらない佇まい。

変わらない景色。

風が何処かの家の換気扇から零れる、料理の香りが運んでくる。


チャイムを鳴らしてから暫く経つと、ドタドタと慌ただしい足音が、家の中から玄関に近付いてくる音が聞こえた。


「あ~~いっ、お待たせしました~っ!」


元気な声と共に、玄関の扉が開いた。

美咲の顔を見たありさは、言葉を発するのを忘れ、そのまま暫し美咲を見つめていた。

そして。



「うぇえええっ、みさきち何で日本にいるんよ!?」



期待を微塵も裏切らない反応に、美咲は声を出して笑ってしまった。

サプライズは成功のようだ。


「おっす、久し振りだな」


目尻を下げながら、ありさに手を振る。


「いくら何でもいきなりすぎやしないか!?」


未だに驚きを隠しきれず、動揺しているありさ。


「いきなりな方が面白いと思ったんよ」


漸く笑いが収まった美咲は、改めてありさを見た。

少し大人びた顔をしているが、雰囲気は相変わらずだ。

あの頃と変わらない幼馴染みを見て、安心感を覚える。


「とりあえず家に上がりな」


「おう」


ありさに促され、家に上がる事にした。

懐かしい部屋の匂いが、日本に帰って来た事を強く感じさせる。


「今お茶持ってくから、居間で座って待ってて」


そう言うと、ありさは台所の方に向かった。

鞄を畳に置き、無造作に敷かれた座布団を手に取り敷き直し、その上に座った。

畳に触れるのも3年ぶりだ。


「いや~っ、しっかしビビったわ~。

 ちょっと眠かったけど、見事に眠気もブッ飛んだわ~」


お盆に麦茶が入ったグラスを乗せ、ありさがやって来た。


「いつこっちに戻ってきたん?」


「2時間前だよ。

 美月に空港まで迎えに来てもらって、飯食ってからありさん家に送ってもらったんだ」


「そっかそっか。

 それにしても、みさきちさ、少し背伸びた?」


「美月にも同じ事言われたなあ。

 自分じゃ解らんよ。

 身長も計ってないし」


「体型もまっっっったく変わらんな!」


「おいこら、ありさ。

 何で私の胸元を見ながら言うんだよ」

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