第31話

そして、パーティー当日。



インターホンが鳴り、美咲が出る。

モニターには、満面の笑みを浮かべたありさのドアップが映っていた。


「はい」


「こんばんは!

 毎度お馴染みの癒しキャラのありさ様だぞ!」


「間に合ってます、おかえり下さい」


「いやいや開けろよ!

 梓もいるんだから!」


「梓だけお入り下さい。

 癒しキャラのありさ様はお帰りやがって下さい」


「さらっと失礼だな、おいぃっ!

 さっさと開けろや!」


すっかりお馴染みのやり取りの為、澪も梓も特にツッコミを入れる事もない。


「ありさ、梓、いらっしゃい」


「澪ちゃま、おいっす!

 やっぱりエプロン姿もいいですな!

 若奥様って感じが出てますな!」


「そ、そんな事ないよ」


照れる澪を見て、ありさはうんうんと頷く。


「まあ、あたしもエプロン姿が似合い過ぎて困っちゃうんだがな!」


「バカ奥様全開だもんな」


ぼそりと呟いた美咲に、ありさがすぐに噛み付く。


「誰がバカだ、誰が!

 世界の注目を独り占め!泣く子も笑うありさ様だぞ!」


「あ~、子供にも嘲笑われてんのな、可哀想に」


「ぎぃぃいいいっ、さっきから何なんだごらぁ!」


「無駄に高いテンションをゴミ捨て場に捨てて来いやぁ!

 来て早々うるっせえんだよ!」


「やんのか!」


「やらいでかってか!」


2人のやり取りを、子供を見るような目で眺める澪と梓は、ソファに座りながら澪が入れたお茶を飲んでいる。


「いつも仲いいなあ」


「トムとジェリーみたいだよね。

 きっと、おばあちゃんになっても、あんな感じのやり取りをするんだろうね」




美咲達のやり取りが一段落すると、たこ焼きパーティーが始まる。

機械を用意し、材料を運んできて、美咲が早速取り掛かる。

澪は人数分の缶ビールを用意し、それぞれに配り、美咲の準備が終わると乾杯をした。


「引っ越しかあ。

 何だか寂しいね」


「とりあえず、気になったところを押さえてもらって、もっかい見学させてもらったら決まりかなあ。

 すんなり入居出来そうだし、それが1番ありがたいかな」


「同性同士の入居は、手厳しいもんね。

 僕達も苦労したもん」


「世間様は優しい目で見てくれんからなあ。

 男女のそれと同じようにいかんのは、なかなかどうして歯痒いけど」


「まあでも、これから少しずつ変わっていってくれたらいいよね」


澪の言葉に、3人は大きく頷いた。

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