第29話

美咲の父親の知り合いに新居を頼むと、1週間程経ってから父親から見つかったと連絡が入った。

何件か候補があるようなので、美咲達は時間を見つけて2人で見学をしに行った。


同性同士での入居は、基本的に敷居が高い。

断られる事が殆どだと聞いていたが、不動産会社の社長が、『多様性の理解を深め、LGBTQの人達にも借りやすくしよう』というのを、最近掲げたようで、美咲達の入居の問題は意図も容易く消え去った。

父親の知り合いといえど、その辺の心配はあったのだが、何とも拍子抜けの事態に、美咲も澪も驚きを隠せなかった。


候補を全部回り、回答の時間を貰い持ち帰る事に。

早速その日の夜、夕食を食べながら話に花を咲かせる2人。


「どの物件も良かったね。

 1件目、凄く良かったなあ」


「2件目は、コンビニやスーパーが近くていいんだけど、ベランダがちょっと狭かったね」


「そうなんだよねえ。

 洗濯物やお布団は、広々と干したいし」


「3件目は風呂が広かったよね。

 キッチンも広かったし、陽当たりも良かった」


「あ、そうだね!

 駅からちょっとだけ離れてるだけだし、そんなに不便はなさそうだよね。

 は~っ、悩ましいなあ」


ご飯をもりもり食べながら、澪は新しい家へ想いを馳せる。


「お披露目会前には引っ越しちゃわないと。

 このままここに住んでもいいんだけど、手狭になってきたからね。

 愛着もあるから、出てくのは名残惜しいなあ」


美咲の言葉に、澪も続ける。


「あたし達の思い出も、みんなとの思い出も、い~っぱい詰まってるもんね」


澪が微笑むと、美咲も笑う。


「ねねっ、引っ越す前にみんなを呼んでパーティーしようよ。

 ありさがこの前、たこ焼きマシン買ったって言ってたから、たこパもいいね」


「アウトレットセールで買ったホットプレートもあるし、それも使いたいな。

 うん、やろっか」


楽しい話が次から次へと出てくる。

その度に、2人で笑顔になる。


「美月は先生の妊活サポートで忙しいから、多分来れないと思うから、アホのありさとハニーの4人でやる感じだね」


「メッセのグループに、早速送ってみよう」



澪が携帯を取ると、すぐにメッセージを送った。

暫くして、美咲と澪の携帯が震えた。

同時に携帯を手に取り、メッセージを確認してみる。

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