第27話
こうして美春と2人で飲むのは、いつぶりだろうか。
ソファーに腰掛けながら、他愛のない話を楽しむ。
のんびりとした時間が、ゆっくりと流れていく。
「そういえば、結婚式の式場とか決めたの?」
「ん~、まだ決めてない。
色々あり過ぎて、決められないのもある。
なかなか澪と休みが合わないから、2人で見に行けないってのもあるけど」
「一世一代のイベントだし、ちゃんと調べた方がいいわ。
話を聞いてくれるかもね。
あたし、サプライズでウエディングケーキから飛び出そうかしら」
「やめなされ!
みんなびっくりし過ぎちゃうから!
まじでやりそうなところが、尚更怖い…」
「あたしに出来ない事はなくってよ!」
含んだ笑みを浮かべる美春を、美咲は華麗にスルーする。
「あんたも結婚かあ。
時の流れの速さを実感するわね」
「何年寄りみたいな事、言ってんのさ」
「天変地異が起こるくらい、若くて美人でナイスなバディーで若くて綺麗なあたしでも、年齢を重ねるのよ。
まあ、楽しみながら、歳を取ってるけどね」
「(まさに言葉通りだな)」
「ん?何か言った?
まあいいや。
ミジンコみたいにちっさかったあんたも、こんなに大きくなっちゃったのね。
身長もあっという間に抜かされちゃって。
成長って早いなあ。
もうちょっと、ちびっ子でいてくれて良かったのに」
「無茶言うなって」
缶ビールを飲み干した美春は、立ち上がると2本目のビールを持って戻って来た。
「あたしはあんたや美月に、ちゃんと愛情を注いでこれたのかしら」
「注いでこれたから、今があるんだよ」
「あんたが小さい頃は、パパもあたしも仕事が忙しくて、ろくに構ってあげれなくて。
特にあんたとは、接する時間が少なかったし。
寂しい想い、させちゃったわよね」
寂しかったか、寂しくなかったかと問われれば、迷う事なく前者を選ぶ。
子供ながらに、両親が仕事で忙しいのは解っていた。
だから我慢した。
いや、無理して我慢をしていた。
「確かに寂しいなって思う時もあったけど、仕事が忙しかったんだから仕方ないよ」
「子供にそんな風に思わせたくなかったのよ。
あたしのパパンもママンも共働きで忙しくて、休みの日にどっかに連れてってもらったりとか、授業参観に来てもらったとか、そういう事がなかったの。
だから、自分に子供が出来たら、そういう寂しい想いはさせたくないし、させないって思ってた。
実際は上手くいかない事の方が多かったんだけどね」
そこで言葉を区切ると、ビールを一口飲んだ美春は、天井を仰ぐ。
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