第25話

『ちょ、すんごい美味しそうなんだけど!?

 あたしも食べたいから、今度連れてって。

 てか、澪と3人で行こ』


予想通りの反応に、クスっと笑ってしまう。


『めちゃくちゃ美味いよ。

 オムライス、澪も好きなんだって。

 そうだね、今度3人で来よう。

 店の雰囲気もいい感じ』


返信をすると、キャラクターの了解スタンプが送られてきた。

携帯を置くと、すぐに食事を再開する。


厨房にいる美咲を見たいのだが、奥にいるのか美咲の姿が見えない。

きっと一生懸命作ってるんだろうなと思いながら、ふっと笑った。


食べ終わる頃には、店内は満席だった。

邪魔をしては悪いと思った夏は、帰る仕度をしようとした。


「お待たせしました、デザートのミルクレープです」


先程のスタッフが、デザートを持ってきた。


「あれ?頼んでませんよ?」


「こちらは店長からのサービスだそうです」


微笑むスタッフは、手際よく皿を置く。


「コーヒーのお代わりもお持ちしますので、お待ち下さい」


戻って来たスタッフが、空になったカップを下げ、コーヒーが入ったカップを置いてくれた。


「ごゆっくりどうぞ」


ニコっと笑みを浮かべ、スタッフは下がった。


「良かったら食べておくれ」


いつの間にか顔を覗かせていた美咲が、夏に声を掛ける。


「こ、こんなに気を遣わないでくれて大丈夫だよ!?」


「気なんて遣ってないって。

 気にしないで食べてって」


手を振ると、また奥に戻って行った。


甘いものは嫌いじゃない、むしろ大好物だ。

頬張れば、再び顔が綻ぶ。

至れり尽くせりとは、正にこの事だ。




「いきなり来てごめん。

 ご馳走様でした。

 値段もまけてもらっちゃって…」


会計を済ませた夏の元に来た美咲は、左右に手を振る。


「そんなに気にしないでって。

 良ければ、また来てな」


「ありがと。

 じゃあ、またねっ」


夏が手を振ると、美咲も同じように手を振り見送った。




心もお腹もいっぱいで、ほくほくとした気持ちで家路を辿る。

新しい友達が出来た嬉しさ、許してくれた事への安堵が胸を満たす。


明日、大学に行ったら、2人に今日の事を話そう。

2人はどんな顔をしながら、話を聞いてくれるだろう。


メッセージじゃ味気ない。

やっぱり、逢って話したい。


鼻歌を歌いながら、駅への道を歩く夏だった。

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