第23話

「家族公認なの?」


夏が目を丸くしながら言う。


「うん、そうなんよ。

 うちの母上は澪の事、すんげ~お気に入りなの。

 私は澪のお母様にも、妹さんにも気に入られてて。

 澪の家族、面白いから大好きなんだ。


 2人の関係を理解してくれて、何処吹く風と言わんばかりに受け入れてくれて。

 カミングアウトもさ、した事によって明暗が分かれるって聞くし…。

 否定されたり、拒絶されたり、泣かれたり。

 そう考えると、私達は凄く幸せな環境だったんだなって」


夏は何も言えず、黙ってしまう。


「世間にせよ、家族や友達にせよ、理解してくれて受け入れてくれた事、本当に感謝しかなくて。

 その感謝を、もっと上手く形に出来たらいいのに、なかなかどうして照れくさかったりして。

 もっと素直にならなきゃ駄目だね」


笑う美咲を見て、夏が口を開く。


「美咲も澪も、幸せなら良かった。

 うちも優も、2人の幸せを願ってるもん」


「うん、ありがとな。

 澪がいい友達と出逢って良かった。

 これからも、澪と仲良くしてあげてね」


美咲の言葉に、夏は頷く。


「勿論、美咲とも仲良くしていきたいよ」


「あっはは、ありがとな」


嬉しくなり、顔が綻ぶ美咲。


「さて、そろそろ夜の準備をするかな。

 良ければ晩飯食ってく?」


「えっ、いいの?」


「もちのろん。

 今メニュー持って来るよ」


自分が使っていたカップを持ち、美咲はその場を後にした。

美咲の背中を見送ると、夏は小さく息を吐く。



澪は素敵な人と想い合っていた。

それを目の当たりにして安心した。


人付き合いが苦手なうちに、優しく接してくれたのが嬉しくて、いつからか澪は自分の中で1番大事な友達だった。

親友と呼べる人もいなくて、友達らしい人もいなかったから、澪や優と仲良くなれて嬉しかった。

そんな大事な友達だからこそ、尚更幸せを願う。


澪の相手が駄目そうな人だったら、全力で澪を守るつもりでいた。

けど、そんな事はなかった。


胸に広がる安心感。

美咲が澪のお相手で良かった。

少しでも牙を向けてしまった自分を叱る。



「ほいよ、メニューだよ」


美咲からメニューを受け取り、一通り見たのだが。


「オムライス食べたいな」


「りょ~かい。

 澪もオムライス好きなんだ。

 じゃあ、少々お待ち下さい」


メニューを受け取った美咲は、厨房へ戻って行った。

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