第20話

「は~、今日は楽しかったなあ」


優達と別れ、帰宅した澪はソファーに寝転んだ。


「ほれほれ、寝るなら着替えてベッドに行けって」


美咲は鞄を適当に床に置くと、煙草を持ってキッチンへ行き、換気扇をつけて煙草を吸い始めた。

今日の事を振り返る。

いろんな事を言われたり、ぶつけられたけど、結果的に楽しかった。


何より、澪がとても楽しそうにしていたが嬉しかった。

はしゃいでいる澪を見ていると、こちらも楽しくなる。


「美咲、ぼ~っとしてどうしたの?」


目をこすりながら、澪がやって来た。


「ん?

 今日の事を振り返ってたんだ。

 澪は優や夏の前では、あんな感じなんだなって。

 いい人達が、澪の友達で良かったよ」


澪の頭を撫でると、嬉しそうに微笑む。


「ありさや梓も大好きだけど、夏も優も大好き。

 優しい友達に恵まれて、あたしは幸せだなあ」


美咲の胸元に顔を埋めると、美咲は煙草を持っていない方の腕で澪を包む。


「澪が優しいから、澪の周りに人が集まってくるんだよ。

 私も澪の優しさを見習わなきゃな」


「美咲は十分過ぎるくらい優しいよ。

 美咲の優しさ、大好きだもん。

 あったかい気持ちになるし、安心する」


「私は…優しいのかな。

 自分勝手だし、自分に甘いし」


澪は顔を上げると、ふっと笑った。


「美咲は優しいんだよ。

 本当に自分勝手だったら、そんな風に言ったりしないよ。

 周りの事もちゃんと見てるし、気遣いも出来てるもん。

 高校生の頃から変わってないよ。

 美咲のそういうところも、好きになったところの1つだもん」


澪の言葉が心に溶けていって、じんわりと浸透してく。

胸の真ん中が温かくなって、言葉に出来ないような嬉しさが溢れてくる。



煙草を灰皿に捨てた美咲は、思い切り澪を抱き締めた。


「美咲、苦しいよ~」


言いながら、澪を美咲を抱き締める。


「ねえ、澪」


「ん~?」


「私、もっと強くなる。

 優しくもなりたい。

 澪をしっかり守って支えていけるような、そんな奴になる」


「あたしも美咲を支えていけるような人になりたい。

 ううん、なる。

 あたしの、あたし達の幸せを守れるような、そんな人になりたい」


新しい決意。

それぞれの想いを胸に。


「寝よっか」


「うんっ」


着替えを済ませ、寝室に向かう。

ベッドに寝転がり、美咲は腕を広げ、澪は腕に頭を載せる。


そのまま美咲は澪を抱き締め、目蓋を閉じた。

澪も同じように目蓋を閉じる。



2人、同じ想いを重ねながら。

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