第19話

「へいへい若者達よ、盛り上がってるねい」


料理を運んできたのは、美月だった。


「つまみばっかじゃ飽きてきただろうし、メインのおかずを持ってきてやってきたぞい」


美月が大きなお皿をテーブルに並べる。


「うわあっ、めっちゃ美味しそう!」


「ヤバい、まじで涎が出てきた!」


優も夏も携帯を取り出すと、料理の写真を撮り始めた。


「君達2人は初めましてだね。

 アタシはこのすっとこどっこいの姉、美月です。

 以後、お見知りおきを」


「誰がすっとこどっこいだ、誰が!」


胸に手を当て、軽く頭を下げた美月を見て、優は頬を赤めた。


「ローストポークは、さっぱり仕上がってると思う。

 こっちはトマトと根野菜、マカロニを煮込んだやつ。

 お熱い内に召し上がれ」


言い終わると、美月は去って行った。


「あ、あの、さっきの方が美咲のお姉様?」


まだ頬が赤い優が口を開いた。


「うん、美咲のお姉さんだよ。

 ここや他の店をやってるんだ。

 料理、すっごく美味しいからいっぱい食べてね」


澪が説明したが、優の耳に届いたかどうかは定かではない。


「優、どした?

 美月さんがストライクだった?」


「ちょ、夏、もう少しオブラートに包んでよ!

 あ~、でも凄く素敵だったなあ。

 あんなに華やかで艶やかな人、初めて見た…」


赤くなった頬に手を当てながら、余韻に浸る優。


「華やかで艶やか、ねえ。

 そんな事を言う人、初めてだな」


「美月さん、優しいし気遣い上手だし、指示も解りやすいし、スタッフからも慕われてるんだ。

 あたしもお世話になりっぱなしだよ」


「大いにお世話になっていいんだよ」


美咲は口唇を尖らせる。

気付いた澪は、美咲の頬を突っつく。


「焼きもちやいてる美咲も可愛い」


「からかうなっての。

 それよか、料理食べよ」


取り皿を取った美咲は、手際よく取り分け、全員に配った。

料理を口に運んだ夏と優は、顔が蕩ける。


「ん~ま~っ!

 なにこれ!高級料理みたい!」


「しっとりしてて、程好い肉の甘みが、口いっぱいに広がってく~」


「美月の料理、久々に食ったな。

 肉料理だし、赤ワイン飲もっと」


「美咲、飲み過ぎないでよ?」


賑やかさも加速していく。

出てきた料理に舌鼓しながら、酒を飲んで。

話も花咲いて、盛り上がって。



楽しい時間は流れていった。

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