第18話

「ほら、澪は昔の…美咲と付き合ってた時の話とか、殆ど話してくれなかったからさ」


「ん~、あの頃は話せる余裕がなかったからね。

 初めて見た時、王子様みたいって思ったなあ。

 球技大会の時、あたしが足首捻っちゃったら、お姫様抱っこして保健室に連れてってくれたり」


「なにそれ、ガチで王子じゃん!?」


「2人でお祭りに行った時、あたしの元カレと逢っちゃって、元カレが悪態ついてきたんだけど、美咲がボコボコにしちゃったり」


「み、見た目は穏やかなのに、なかなかバイオレンス!?」


「クリスマスに逢う約束してたんだけど、あたしが急にバイトに入っちゃって。

 長引いちゃって、諦めてバイト先から出たら、美咲がずっと待っててくれて。

 そのまま美咲の家で、美咲が作ってくれた手料理食べて過ごしたんだ」


「ちょおっ、どんだけハイスペック!?

 何処にそんな完璧な人がいるんだね!?」


澪は得意げな顔をすると、美咲の腕に自分の腕を絡める。


「ここにいるでしょ?」


ふふんっと言いたげな表情で、夏達にアピール。


「ちょ、ちょっと澪さん、そんなにぶち上げなアピールをせんでも」


「いいじゃない、やっとこうやって、あたしの大事な人の自慢を出来るんだから」


いつも以上に素敵な笑みを浮かべた澪を見て、美咲の胸がキュンっとなる。

そんな2人を見て、夏も優も嬉しくなる。


「…友達の惚気って、こんなによろしいもんなのね」


「右に同じく」


澪の笑顔、凄く幸せそうだな。

夏も優も、同じ事を考えていた。


「み、澪、惚気すぎだって」


「今日くらいいいじゃない。

 沢山惚気たいもん。

 美咲は嫌なの?」


「嫌ではないけどさ」


「じゃあいいじゃない」


ご機嫌な澪に、3人はやれやれという表情を浮かべる。

勿論、それは嫌な意味ではない。


「他にはどんな話をしてくれるの?」


「美咲はこんなにクールだけど、可愛いところもいっぱいあるんだよ。

 涎を垂らして寝たり、わんこを見るとニコニコしたり。

 あ、感動系の映画を観ると、絶対泣いちゃったり」


「ちょ、澪、それは別に話さなくてもいいんじゃない!?」


「あとは甘えん坊だったり、膝枕すると安心して寝ちゃったり」


「美咲、可愛いね」


「真顔で言わんでくれ!」


和やかで楽しい雰囲気。

話も笑顔も弾む。


「澪、今日はフルスロットルだね」


「うん、絶好調だよ!」


「今まで見た事のない、澪を沢山見れて嬉しいわ」


夏も優も、笑顔が絶えなかった。

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