第11話

「お逢い出来て、嬉しいんです。

 澪とお付き合いしていたけど、色々あって別れて、またお付き合いをなさったんですよね?」


異性を好む人に、同性同士の恋愛事情を、何処まで許して話せばいいのだろうと考えてみる。


「ええ、そうです。

 私の我儘で、澪と別れる事になってしまって…」


「3年も連絡も取らず、逢わずだったのに、また付き合えたんですね」


夏が急に口を挟んできた。


「連絡をしようと思ったんですが、なかなか勇気が持てなくて。

 何より、フラれてしまいましたし…」


「澪から一通りの話は聞いてます。

 澪は出逢った時から、ずっと何処か悲しげで。

 ちゃんと笑ってくれるようになったのは、貴女と再会して、仲が戻ってから。

 貴女の存在の大きさを感じます」


攻撃的ではないのだが、そう取れるような口調の夏。


「澪から笑顔を奪ってしまったのは、紛れもなく私です。

 申し訳ない事をしたと思ってます。

 けど、周りの人達が支えてくれたから、今の澪があるんだなって…」


そこで言葉を切り、ビールを一口飲む美咲。

口の中は、思っていたより渇いていた。


「美咲さんも、澪と同じように寂しい想いをされてきたんでしょう?

 ある意味、お互い様ですって」


すかさず優がフォローを入れる。

頷く美咲を見て、優は優しく微笑む。


「澪が女の子と付き合ってたって聞いた時は、凄くびっくりしました。

 以前美咲さんの写真を見せてもらった時、男の子と見間違うくらい格好良くて、それにもびっくりしました。

 美咲さんの話をしてくれた時、澪は今まで見た事もないくらい、柔らかい笑顔を浮かべてて、『ああ、凄く大切な人だったんだろうな』って。

 そんな美咲さんと、よりを戻せて良かったと思ってます。

 何より、澪に笑顔が戻ったし、以前よりもぐんと明るくなった。

 今の澪が、本来の澪なんだって。

 何だか新鮮な感じでした」


「そんな澪を見るのに、3年もかかったけど。

 出来たらもっと早くに見たかった」


ぼそりと言った夏に、美咲は視線を移す。


「澪がいろんな気持ちや、想いを抱えながら生きてたのも知らなかった。

 友達になって、いっぱい遊んだし、いっぱい話してきたけど、大切なところはいつもはぐらかされて。

 うちらは付き合いは短いけど、澪は大事な友達である事に変わりはない。

 大事な部分を、支えてあげられなかったのは、少し悔しい」


そう言うと、夏は美咲から視線を反らすと、ジョッキを取り、二口くらい飲み息を吐いた。

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