第9話

電車を使って、美月の店がある駅へと向かった。

夕方という事もあり、車内は少し混んでいる。


電車に乗るの、久々だな。

そんな事を思いながら、車内の窓の向こうの景色を見つめる。

空はすっかり真っ暗で、ビルの灯りが一層明るく見えた。


2つ目の駅で下車し、ホームを抜けて、改札を抜けて。

駅を背にして右に向かい、そのまま真っ直ぐ歩くと花屋が見えてくる。

それを越えて信号を左に曲がり、暫く歩くと店が見えてくる。


ドアを開けると、店内は既に賑やかだった。

美咲に気付いたスタッフが、小さく会釈をしたので、美咲も軽く頭を下げた。


「お、早かったじゃん」


同じく美咲に気付いた美月が、美咲の元へやってきた。


「副店長が早く来てから、早めに上がらせてもらった」


「そっかそっか。

 澪ちゃんも友達も、まだ来てないよ」


「席で座って待ってるとするよ」


美月に案内された4人掛けのテーブルの、奥に座った。


「何か飲む?

 バイクで来てないんでしょ?」


「うん。

 グラスビールでも飲むかな」


「グレイテストビューティー美月様が、バリバリと働いているというのに、残酷な妹は美味しそうにビールを飲むとな」


「ちょ、私はしっかり働いたし、ビールを飲む権利はあるぞ!?」


「あんたの代わりに、あたしがビール飲んでやるわ」


「やめろい!

 つか、仕事中じゃねえか!」


美咲を弄って遊んだ美月が去ると、程なくして別のスタッフが中ジョッキのビールを持ってきてくれた。

澪達が来てないのに、先に飲むんでいいのかと思ったが、頭を振ってビールをいただく事に。


冷えたビールが、喉を潤してくれて、少しだけ気が楽になった。

ジャケットから携帯を取り出し、澪からメッセージが届いていないか確認してみるも、メッセージは届いていなかった。


窓の外を眺めながら、ビールを飲む。

スーツを着た男の人が、携帯を弄りながら駅の方へ向かう。

楽しそうにお喋りをしながら、コンビニに入っていく女子高生。

いろんな人が行き来するのを、ぼんやりと眺めていた。



暫くすると、店のドアが開いた。

腕時計を見ると、そろそろ待ち合わせの時間だ。

澪達が来たのかもと思いながら、姿勢を正した。


美咲がいるテーブルに、2人組の女性が通された。

2人と目が合う美咲。

先に会釈をしたのは、女性達だった。

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