第5話

触れ合う肌と肌。

溶け合う熱と熱。


止まらない愛しさが、2人を更に駆り立てる。


熱くて深い海を、何処までも泳いでいきたくなる。

背中を滑る指先が、体の隅々までをも刺激する。


見つめ合えば、言葉よりも早く口唇を重ねて。

舌先を絹のような肌に這わせれば、濡れるそこは疼く。


果てた後に抱き締め合って、互いの鼓動を重ね、愛し合える悦びに浸る。

息が整うのを待たずに、またキスをして…。




「美咲、激しすぎ…」


事の後、裸のままベッドに寝転びながら、澪が言葉を発した。


「激しくなるよ、好きだから」


同じく裸のまま、澪の方を見ながら微笑む。


「…狡い」


「何が?」


「何でもないよ」


澪が美咲の腕に頭を預ける。


「こうやって触れ合える事、本当に嬉しいもん」


離れていたからではなくて、好きで、愛しくて堪らないから。

だからこそ、想いが溢れて止まらなくなる。


澪を抱き寄せた美咲は、澪の額にそっとキスをした。

くすぐったそうに微笑む澪が愛しくて、そのまま強く抱き締める。


「澪、好きだよ」


美咲の言葉に、澪は頷く。


「ずっとずっと、好き…」


澪も美咲を抱き締める。

心が震えるくらいの安心感。

ぽっかりと穴が開いていた心は、すっかり満たされている。


互いの傷も、今は痛む事もない。

毎日が幸せで溢れているのは、愛しい人が傍にいてくれるから。


「あたしも美咲の事、大好きだよ」


言葉にするのは、いつも少し照れくさい。

気持ちを言葉に表すのは、今でもほんのり恥ずかしくて。




肌の火照りも冷めた頃、服を纏って寝室を後にし、リビングへ戻った2人。

美咲は台所に行くと、換気扇の近くで煙草を吸い始める。


澪は寝室から持ってきたプリンを、ソファーで食べる事にした。

一口、二口と食べていたが、食べるのをやめて立ち上がると、台所へ向かう。


「美咲」


呼ばれた美咲が振り返る。


「はい、あ~ん」


プリンが乗ったスプーンを差し出されたから、口を開けていただく。


「甘いもん、久々に食ったなあ」


「美咲は甘いのは、あんまり食べないもんね」


美咲の隣で、再びプリンを食べる澪。


煙草を吸い終わったと同時に、澪もプリンを食べ終えた。

灰皿に煙草を捨てた美咲は、澪の腰を抱き寄せると、そのままキスをした。

そして、澪の口唇をぺろりと舐めた。


「甘いね」


そう言って笑う美咲を見るよりも前に、澪は赤面したまま固まっていたのだった。

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