第4話

「ん~っ、やっぱありさのお店のきんぴらごぼうは美味しいな~」


満面の笑みで頬張る澪を、優しい眼差しで見つめる美咲。


「ちょ、ちょっと、大きな口を開けながら食べてるところ、見てないでよ」


「可愛い顔をしながら食べてるなって、思っただけだよ」



2人で夕飯を食べ終わり、食器を洗っていると澪が後ろから美咲に抱き付く。


「どしたの、奥さん」


「後ろ姿が格好いいから抱き付いたの」


「そんなん、見慣れたでしょ?」


「見慣れても、変わらず格好いいもん」


照れくさい美咲は、咳ばらいをしてみるも、澪はそれが照れ隠しなのは解っている。


「れ、冷蔵庫にプリンが入ってるから、食べていいよ」


「やったね、旦那様大好き!」


美咲から離れると、早速冷蔵庫に向かい、扉を開けてれプリンを探す。

洗い物を終えた美咲はタオルで手を拭くと、澪の背後に立ち、そのまま澪を抱き締める。


「美咲~、蝉ごっこしてるの?」


「可愛らしい後ろ姿だったから、抱き付いたんだよ」


プリンを見つけ出した澪は扉を閉め、屈んでいた姿勢を直す。


「プリン食べたいから離れてよ~」


言いながら、ソファーの方へ歩いていく澪。

背中に抱き付いたまま、その後に美咲が続く。


と、美咲は澪から離れた。

澪が振り返ると、間を置かずに抱きかかえられてしまった。


「わあっ!?」


「澪、ちょっと痩せた?」


「毎日もりもり食べてるから、痩せてはないと思…っ!」


言い終わるよりも早く、美咲は澪の口唇を自分の口唇で塞ぐ。

キスを繰り返し、口唇を離す。


「い、いきなりすぎる!」


ドギマギし、心臓はどんどこ高鳴る。


「キスしますって、言った方が良かった?」


「そうじゃないって!

 とにかく下ろしてよ」


美咲の首に腕を回したまま、お願いしてみるも。


「や~だ」


ニヤリと笑った美咲は、子供が悪戯をしたような笑みを浮かべる。


「ちょ、ちょっと、あたしはソファーでプリン食べたいんだけど!」


「私は澪を食べたいからさ」


殺し文句に、見事に心を撃たれた澪は、言い返す事が出来ずに、赤面したまま黙ってしまう。


「デザートは最後に食べるもんでしょ?」


澪を寝室に運ぶと、そっとベッドの上に下ろす。

プリンを澪の手から取り、デスクの上に置き、澪の頬に手を伸ばすと、そのまま親指で澪の口唇に触れる。


「夜はまだまだこれからだよ、奥さん」


ニコっと微笑み、澪が何かを言おうとしたが、それを遮るように口唇に口唇を重ねた美咲だった。

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