第3話

「澪はその友達には、女同士で付き合ってるって言ったみたい。

 うちら以外の人達は、その、同性と付き合ってるってのはどう見えるのかな。

 気にしてないと言えば…そうだな、嘘にはなるかもだけど。

 私と付き合ってる事によって、澪が嫌な想いをしてないかなって思う時もある」


「澪ちゃまは、そんなん気にしてないと思うけどね。

 まあでも、言いたい事は解るよ。

 女の子同士で手を繋いだり、腕を組んで歩いてると見られたりするしさ。

 男女だと言われたりしないのにね。

 なんだかなあ、別に理解しろとは言わんから、放っておいてほしいんだよなあ。

 なんでわざわざこうさ、『あいつらキモくね?』とか、『レズビアンだ』とかこそこそ言ってくるんかなって思うよ」


大きく煙草の煙を吐き、煙草を咥えながら天井を仰ぐ。


「結局のところ、同性愛者は物珍しいのもあるんだろうな。

 世の中は男は女を愛し、女は男を愛すってのが定義だから、それに反する私らが悪なのかも。

 人を愛する事は、自由な筈なのにね。

 水と油が混じり合う事がないように、私らも相容れないんだよな」


「まあなあ。

 けど、世間様に許しを得なきゃ、付き合っちゃいけない訳じゃないんだから、そこまで深く気にしないでいいんだろうね。

 ほら、大変素敵な言葉があるではないか。

 『よそはよそ、うちはうち』」


ありさの言葉を聞いた美咲は、ふっと笑う。


「そうだな、気にしてもしゃ~ないな。

 ある意味、開き直りも大事なんかも」


「そうそう、開き直ったもん勝ちだよ」


吸い終わった煙草を灰皿に捨て、美咲は両腕を大きく伸ばす。


「私、上手く話したり出来るかな」


「今更か~?

 んな小さい事、気にするまでもないだろ。

 気楽に食事するって考えればいいんだよ。

 みさきちは相変わらずヘタレだなあ。

 何も漫才披露する訳でも、面接を受ける訳でもないんだから、そんなに構えなくてだ~いじょうぶだって」


腹を抱えながら笑うありさに、ティッシュ1枚取ると、丸めてありさに投げる美咲。


「あたしら以外の人と逢うのは不安かもだけど、澪ちゃまの友達なら平気だって。

 どうしても不安だったら、あたしも参加して差し上げようか?」


「やめれ、雰囲気がぶち壊される。

 ありさのバカが、友達に移ったら申し訳ないし」


「人を病原菌扱いするんじゃねえ!」





それからもお喋りは続き、沢山笑った美咲は抱えていた不安が和らいだ。

ありさに別れを告げると、真っ直ぐ帰宅したのだった。

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