第2話

「ほえ~、澪ちゃまのお友達に逢うんだ?」


早くに仕事が終わったので、外村弁当に顔を出した美咲。

客がはけてから、ありさに声を掛けた。


「私に逢ってみたいんだってさ」


「あれじゃん?

 みさきちのド貧乳見てみたいんじゃん?」


「おいこらありさ、今さらっとド失礼な事言いやがりやがったな」


「おいおいみさきち、貧乳というワードを聞いてブチ切れるって事は、貧乳って自覚があるって事だぜ~?

 まああたしは、自分がたわわな豊潤マシュマロおっぱいという自覚があるがな」


「てんめえ~、デカ乳しか取り柄がないのに、威張りちらしてんじゃねえ!」


「背が高いしか取り柄がない奴に言われたかねえわ、貧乳長身があぁあ!」


「やんのか、ごらあ!」


「やらいでか、ごるぁあ!」


店先でもお構いなく、いつも通りのやり取りをした2人。

店の前を通る人達が、2人の言い合いを一瞬見るも、『関わったらヤベェ』と思ったのか、すぐに視線を前に戻すのだった。



休憩を貰ったありさは、家に美咲を上げた。


「あ、親戚からにんじんいっぱい貰ったから持ってけ~い」


「助かるわ。

 にんじんしりしり、グラッセ、にんじんドレッシング…うん、いいね」


「総菜も持ってけ~」


「いつも悪いな、ありがとう」


「誰が貴様に差し上げると言ったか、戯けが。

 あたしは澪ちゃまにあげるのじゃ!」


「私の素直なお礼を返せよ、バカちんが!」


ありさが持ってきた麦茶が入ったグラスを受け取ると、グイっと一気に飲み干す美咲。


「お代わり!」


「味わって飲めよ!

 自分で入れてこい!」


勢いよく立ち上がった美咲は台所に行き、冷蔵庫から麦茶が入ったボトルを取り出し注いだ。

灰皿を持って居間に戻り、鞄から煙草を取り出し吸い始める。


「それにしても、みさきちは人見知りがちなのに、初めましての人に逢って大丈夫なのかね?」


「接客スキルはあるし、何とかなるっしょ」


「お仕事モードで接してどうすんよ。

 あたしみたいに、素敵スマイルで接してあげなしゃい」


「出来る訳ないだろ、そんな間抜け面」


「誰が間抜け面だ、こらぁ!

 てか、澪ちゃまはみさきちを何て紹介するんだろ」


ありさもエプロンのポケットから煙草を取り出し、一本取り出すと口に咥えた。

それに合わせて美咲は自身のジッポを取り出し、ありさの煙草の先に火をつけた。

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