7日目/人生は予想外の出来事ばかり

第84話

「年末だし、クリスマスだし、週末だしで、道路混んでんなあ」


運転手の独り言が聞こえた。

年末だし、クリスマスだし、週末だしで、人が凄いのに、自分は何で外出をしてるんだろ。


去年は仕事の納期がクリスマスだったっけ。

仕事を終えて、腹減ったからいつも行く居酒屋に行って、いつもと変わらない1日を過ごして終わったんだった。


そして今年。

クリスマスに仕事以外で外出なんて、何年ぶりだろう。


タクシーは少し進んで、停まっての繰り返し。

大きい道路だからか、信号が多いのも手伝って、なかなか進まない。

目的地に到着するまで、まだかかりそうだ。


クリスマスに染まった街中。

行き交う人々は、皆楽しそうだ。

車のウインドウを下げてないから、外の音までは聞こえてこないけど、きっと賑やかすぎるくらい賑やかだろう。


上着のポケットから、スマホを取り出す。

LINEを起動し、彼女にまだ時間がかかりそうだというメッセージを送った。


スマホをポケットに戻そうとすると、スマホが震えた。

彼女から『今三越をぶらぶらしながら時間を潰してる』と返信が。

とりあえず、寒くないところにいるなら安心した。


こちらの冬は寒い。

今夜は夜中に雪が降るかも、と天気予報で言っていた。

昼間よりも冷えてきたし、降雪も否めないかもしれない。


家でのんびり過ごす予定だったのに。

断る事だって、出来た筈なのに。

そうしなかった自分に、不思議さを感じていた。


人とは適度な距離を取って、のらりくらり生きてきたのに。

彼女が現れてから、それがやや変わり始めている。

変わり始めているのは、生活もだが。


家族以外の誰かと生活すると、こんな感じに変化していくのだろうか。

…悪い方に変化している訳ではないから、まあいいのだけれど。


人の事は然程気にせず、自分の事を考えてりゃあ良かったのに。

最近は専ら、彼女の事を考える事が増えた。


毎日家事をやらせちまって悪いな、とか。

また悪い奴に引っ掛かってないか、とか。

家族と離れて、ホームシックになってないか、とか。


別に気にする理由なんてないのに。

ふとした時に、気にしてる自分がいる。

それもまた不思議さを感じている。


家族以外の事を、こんなに気に掛けるようになるなんてな…。

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