6日目/振り回されてると思ってたけど

第70話

『時は金なり』


偉大な政治家が残した、誰しもが知る名言だ。

けして、キテレツ大百科のコロ助が言った台詞ではない。


さて、どうしてそんな言葉を冒頭に述べたのか。

別に気取りたいから言った訳じゃない。



現在は年の瀬が近付く12月。

寒さも本格化してきて、全身ヒートテックを纏っても糞寒い季節。


世間は年末に向け、何処か忙しなさを感じる。

私も同じく、年末年始はの~んびり過ごせるよう、日々納期に間に合うよう、頑張って作業を進めていた。

進捗状態はよろしく、このペースならあと数日で仕上がるだろう。

部屋に缶詰めだが、全ては長い休みの為だと毎年自身に言い聞かせながら、ペンやら色鉛筆やらペンタブのペンやらを走らせる。


私が頑張っている間、彼女は私の世話に精を出してくれた。

毎回の食事も、栄養豊富なメニューを揃えてくれた。


作業に没頭していると、風呂に入るのが面倒で億劫。

ので、1日か2日入らない事がよくあった。

が、今は1日1回入るようになった。



ある日の事だ。

いつものように作業をしていると、彼女がいきなり部屋に入ってきて、「ちゃんとお風呂に入りなさい!」と、作業をしている私の首根っこを掴んで、そのまま脱衣場まで連れていかれる。

そのまま彼女に洗われそうな勢いだったから、「風呂に入るから勘弁してくれ!」と叫んだ。


満足げな顔をした彼女は、脱衣場を出ていく。

私は諦めて風呂に入る。

湯船には程よい熱さのお湯が張られており、水面には楽しげにアヒルさんの人形が漂っていた。


湯船に浸かると、凝り固まっていた筋肉がほぐれていくし、縮こまっていて流れが悪かった血流も淀みがなくなる。

気持ちも体もリフレッシュ。


風呂から出ると、彼女は親指をグッと立てながら迎えてくれた。

風呂のお陰で、気持ちを新たに作業に没頭する事が出来た。

…悔しいけど、ちゃんと彼女に礼は言った。



彼女がすっかり生活の一部になっている。

いつからか、レギュラー枠にいらっしゃる。

世話をしてるのか、はたまたしてもらってるのか解らない状況だ。

当の彼女は、「世話をやくのは嫌いじゃないからいいの。あたしがちゃんとしないと、森本さんがカオス化するし」との事。

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