第57話

「森本さん、いつもこんなに食べてるの?」


「食わんと元気にならんからな」


私も「明夫定食」を完食したところだった。

今日も今日とて、お腹いっぱい美味いもんを食えてご満悦なり。


ビールを飲み終え、ウーロンハイを頼んだところに、店のドアが開いた音が。

すぐに『お、ち~ちゃん!』という声が聞こえてくる。


「お疲れ、姉さん」


常連の1人の姉さんと、その相方のケンちゃんが来店。


「この子がち~ちゃんの言ってた子?

 めっちゃ可愛いんだけど!」


「こんな可愛い子を、ほったらかしにしてたんかい?」


2人は私達の後ろにある、2人用のテーブルに着く。


「ほったらかしてたのをチャラにすべく、ここに連れてきたんよ」


「食い物でチャラにするとか狡くない?

 あ、あたしはみんなから姉さんって呼ばれてるから、貴女もそう呼んでね。

 お名前は?」


「は、初めまして、海野たきなって言います!」


緊張した面持ちで、2人に挨拶をする彼女。


「姉さん、今日子供は?」


「遊びに行っちゃった」


「お、お子さんいるんですか!?」


声をあげたのは、勿論彼女だ。

姉さんは見た目が若く見える為、子持ちに見えない。


「高校生の娘がいるよん。

 あ、お酒来たから乾杯しましょ」


4人で乾杯をする。


「こっちのひょろい男は、同じ職場のケンちゃん。

 よく一緒に飲みに来るの」


「ひょろいって言うなよ。

 よろしくね、たきなちゃん」


「よろしくお願いします!」


わいわいと話していると、またドアが開いた音がして、顔を出したのは常連のピッピだった。

ピーナッツが好きだから、仲間内からはそう呼ばれている。

彼は背が大きく、体格もデカい。


「ちづ、お疲れ」


「ピッピ、お疲れ。

 姉さんとケンちゃん、来てるよ」


「お、うっせえのが来てんのか」


「ちょ、ピッピ、うっせえとか酷くない!?」


どんどん賑やかになっていく。

彼女がついていけているか心配したが、会話にも参加して楽しんでいる。

私よりも全然社交性があるようだ。



店内にいた客も帰り、ほのかちゃんも仕事を終えてあがった。

明夫さんも片づけを終えると、こっちに来て交ざった。


「改めて、仙台にようこそ。

 ち~とはやっていけそうか?」


「森本さん、優しいですし大丈夫です。

 甘えっぱなしで、凄く申し訳ないんですけど…」


「いいんだよ、甘えておけば。

 ち~もちゃんと、面倒見てあげろよ」


「わ~ってるよ」

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