5日目/田舎はイオンがデカくて、大体の事は済むし買えるんだよ

第54話

私がたまに行く居酒屋の顔なじみが、彼女を店に連れてこいと申した。

『いきなり異人、怪人みたいな巣窟に、幼気な女の子を連れてくるのは気が引ける』と言ったら、四方から枝豆の殻をぶつけられたのは記憶に新しい。


とりあえず彼女に事の旨を伝えてみると『いいよ』

そんなあっさり快諾していいのかと尋ねたら、『気分転換になるかもだし、森本さんが誘ってくれたのが嬉しいからさ』

私が誘ったというか、常連達からのお誘いなのだが。


仕事が一段落したので、その日の夜に彼女を連れて店に行く事に。

仲間内には、一応連絡しておいた。


2人で家を出て、駅の方へ歩く。

仕事帰りであろう人達や、制服を着た学生達が、スマホを片手に歩いて行く。

私の横を歩く彼女を見てみると、視線をあちらこちらに動かしていた。


「何か珍しいもんでもあったん?」


私の言葉に、彼女は私に視線を移す。


「ん~、賑やかだなって。

 新宿とか、池袋程ではないけどさ。

 高校生とか、めっちゃ楽しそうだよね。

 あたしも友達と遊びに行ったり出来たらいいな」


今、彼女は仕事をしていない。

正確には、私が辞めるように促した。




『仕事辞めたらここにいられないし、お金も工面出来ないじゃない』


『別に追い出さん。

 まずは環境に慣れろって。

 自分を落ち着かせる事もしろ。

 一辺にあれもこれも出来ん。

 なら、今出来る事からしてみろ。

 生活費は私が貸してやる。

 働けるようになったら、返してくれりゃあいい』


『でも…。』


『人の好意は素直に受け取っておけ。

 嫌なら無理にとは言わん、あくまで私の提案だ。

 ただ、心身を落ち着かせるのは大事だと思う。

 要するに、1人で何でもかんでも抱え込んで無理すんなって話だ。

 基盤を築けていないんだから、足場が崩れるんだろ』


『それは…。』


『今お嬢ちゃんが頼れる人が私しかいないのら、いくらでも頼ればいい。

 出来る事、出来ない事もあるけど、話は聞くから』


『大人なのにそんな甘えっぱなしじゃ申し訳ないよ』


『甘える事に、大人も子供も関係ないんだよ。

 あと、パパ活を教えた奴とは縁切れよ。

 関わったってろくなもんじゃないぞ』


『…うん、そうだね』

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