第42話

テレビを観ながら、適当に時間を潰す。

チャンネルをあれこれ回してみるも、これといった番組はやっていない。

人気のお笑い芸人達が出ている番組を見て、笑う気にもなれない。


ニュース番組を観ていたが、余計に気分が沈む内容だったから、テレビを消す事にした。

飲んでいたビールも空になったから、座っていたソファから立ち上がり、台所に向かった。


空き缶を捨て、冷蔵庫から新しい缶ビールを取り出すと、適当なところに置いた。

煙草をバッグの中に入れっぱなしだった事を思い出し、ソファに置いてあるバッグの元へ。

再び台所に行き、換気扇のスイッチを入れて、煙草を吸い始める。


ぼんやりとしながら煙を吸い、吐き出す。

煙は僅かに宙を舞い、すぐに換気扇に吸い込まれていった。

それの繰り返し。



彼女から、どんな話が出てくるのだろう。

あらかた想像はしているが、出来れば想像が外れてほしい気持ちもある。


体を…売っていたのか。

パパ活という名の援助交際。

体の関係は持たず、ただ食事をしたり、出掛けたりするだけなんて聞いた事があるが、100%みんながそうとは限らない。


またはキャバクラに勤めていたとか。

客とアフターやら、同伴やらして親密になり、そのまま体の関係に…。


そこまで考えて、頭を振って考えるをやめた。

勝手な先入観で、彼女のイメージを作るのはよくない。

いくらなんでも、それはいけない。


まずは話を聞いてみなきゃ解らない。

解らない事だらけで、不安な要素しかない。



彼女を信じてない訳じゃないが…。

そう、私は彼女を知らなすぎるから。



もう少し会話をしておけば良かった?

コミュニケーションを取っていれば良かった?

考えても、それは結局後悔にしかならない。


気持ちにモヤがかかる。

すっきりしなくて、胸の辺りが重い。


もう一本煙草を吸おうと、煙草に手を伸ばしたら、浴室のドアが開いた音が聞こえた。

煙草を吸う。

それからちょっとしてから、ドライヤーの音が聞こえてきた。

もう少ししたら、彼女はリビングに来るだろう。


勝手に回る頭を落ち着かせるように、大きく煙草の煙を吸い込み、ゆっくりと吐き出してみる。

頭だけじゃなくて、気持ちも落ち着かせなくては。


暫くして、彼女がこちらにやって来た。


「もう煙草吸い終わるから待ってて。

 ビール飲むか?」


「うん…」


冷蔵庫から取り出した缶ビールを渡すと、彼女はソファの方へ行った。

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