第25話
とりあえず、誰かに話すのは保留にしたまま、日々を過ごしていった。
ひとつ屋根の下で一緒に暮らすと言うか、ただ単に共有しながら住んでるというだけで。
特に何か起こる訳でも、起きる訳でもない。
生活の基盤が違うから、同じ家に住んでると言えど、逢わない時は逢わない。
食事も一緒に取ってる訳じゃないし、寝る時間もそれぞれだ。
物音等でいる事を確認する程度。
自分が思っていたよりも、淡白な共同生活だった。
ある日の昼間。
たまたま彼女とリビングで逢った。
就活をしていた彼女だったが、こんな世の中というのも手伝って、なかなか上手くはいかないようだった。
職がなければ、得られるものもない。
それは生活に支障をきたす。
金銭面の事を考え、アルバイトを始めたそうだ。
駅の近くのコンビニで働き、何とか繋いでいるらしい。
食費は貰ってないが、光熱費や家賃は合わせて30000円を受け取っている。
『生活が苦しいなら、無理する必要はない』とは言ったのだが、意地かプライドか、『大丈夫だから』と言って聞かなかった。
私は私で仕事がぼちぼち入ってきている。
急ぎの案件ではないのは救いだ。
私はイラスト系の仕事で飯を食っている。
小さい頃から絵を描くのが好きだった。
好きな事、得意な事を仕事に出来ているのは、正直ありがたい。
(楽ではないけどさ)
仕事柄、引きこもりがちだ。
生活リズムも狂う時もあるけども、なるべく朝は起きて夜は寝たい。
が、そう上手くは事を運べないんだけど。
なかなかどうして、思うようにはいかない。
それが人生だと言える程、長く生きてる訳じゃないし、経験値が多い訳じゃないが…。
余談に走ってしまった。
話を現在に戻そう。
今日も今日とて、彼女は早い時間帯に家を出た。
朝早くに家を出て、遅くに帰ってくる。
確か販売員をやってると言っていたな。
自分はやった事はない。
もとより、接客業は苦手だから、避けて通ってきたのだが。
最近は特に帰りが遅いような気がする。
友達が出来たから、仕事の後に飲みに行ったりしてるみたい。
そうそう、彼女は年齢を誤魔化していたのだ。
19歳と言っていたが、実際は21歳だった。
何でサバを読んだのかと聞いたら、私を信用してなかったからだそうだ。
何だそりゃ。
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