第23話

さて、改めて彼女をどうするべきだろう。

先延ばしできる案件ではない。

自分も仕事があるし、野放しにするのも後味が悪い。


ソファに座った彼女は、黙ったままだ。

私の反応や言葉を待っているんだろう。

それによって、今後の自分がどうなるかが決まるのだろうし。


仕事の邪魔をされないだろうか。

もとより、同居人が出来たら、生活が180°変わる。

今まで気を遣わずに、悠々自適に暮らせていたが、それが出来なくなる恐れがある。

何より、1人の時間が減るか無くなる。


人と一緒に住むとなれば、何年ぶりになるだろう。

いや、それは置いておいて。


「お嬢ちゃん」


私の声に彼女は顔を上げ、こちらに視線を向けた。


「仕事を先に探さなきゃだけど、どんな仕事に就きたいのさ」


「就けるなら何でも。

 生活出来るくらいの、手取りがあるなら気にしないよ」


こっちは最低賃金は安いし、希望するような給料を貰える仕事は限られそうだが。


「じゃあ、とにかく仕事を見つけろ。

 金がなけりゃ、何も出来ん」


「うん、解ってる」


真剣な面持ちで、彼女は大きく頷いた。


「仕事が決まったら、住むところだな。

 駅近くは争奪戦だから、ちょっと離れたところだったら、それなりにあると思う。

 バスもいっぱい出てるし、何ならチャリでも使えばいい」


彼女はもう1度頷く。


「とりあえずここに置いてやる。

 けど、仕事も住むところも見つかったなら、さっさと出て行け」


彼女の瞳に、パッと光が灯ったように見えた。


「えっ、ここに住んでいいの!?」


「置くだけだ。

 飯も何も自分でやれ。

 ただの共同生活だ、勘違いはするな」


私の言葉が届いているのか、いないのかは解らないが、彼女は嬉々とした表情になる。


「私の生活や仕事を邪魔したり、邪魔になるようなら、すぐに追い出すからな」


煙草を灰皿に捨て、彼女がいるところへ戻ろうとしたら、大きな音がした。

間を置かずに彼女が私の胸に飛び込んできた。

いきなりの出来事にバランスを崩したし、胸骨に彼女の頭がぶつかり、痛みが走った。


「ごふっ」


思わず声が出た。

が、彼女は気付いていない様子だ。


抱き付いたままの彼女をどうしていいのか解らず、私はそのまま立ち尽くす。

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